FILE.01 黒金校救護団・特殊部隊
「公園に・・・『手』が、落ちてたの・・・。すぐにお巡りさんに連絡したんだけど、お巡りさんが着いた時には、もう、その『手』はなかった。」
 泣きながら俺に話したのは、中学の頃、付き合っていた同級生の川村真弓だった。
 そのあと、彼女は「幻覚症状」の疑いで派出所に呼ばれ強引に薬物検査を受けさせられた。・・・が、結果は「問題無し」。すぐに家に帰されたが、翌日、彼女の女子校では、「覚醒剤所持で警察に捕まったらしい。」という、パンパンに腫れ上がった噂が広まった。
 真弓は、警官から『心の傷』と言う名の土産をもらって帰った。



 俺の名前は、元内ざくろ(もとうちざくろ)。横浜にある市立黒金高等学校の1年生。9歳の時までアメリカのニューヨークで育ち、そして両親と姉と4人で日本へ来た。両親にしてみれば『帰郷』と言うやつだ。俺は小学生時代をアメリカンスクールで過ごし、そして普通の日本の中学校へ進学する。そして、真弓と出会った。2年生の春くらいまで付きあっていたが・・・別れた。理由って言う理由はない。真弓の事は今でも好きだし、真弓もこんな誰にも言えないような変な話をわざわざ俺の家に来てまで話す。ま、気取った言葉で言うと『親友(one's best friend)』ってヤツかな。
「安心しな。俺が何とかしてやるよ。」
 真弓は、俺のこの言葉を待っていたかのようにコクッとうなずくと、
「ありがとう。ざくろちゃんに話して、ちょっと楽になった。」
 と言い、帰っていった。

 俺にはひとつの凄い肩書きがあった。
 この時代、この世の中、不条理な事が多すぎる。「公園に手だけ落ちている」と言うのはもちろん、『怪事件』と呼ばれる事件が多発していたりする。そんな危険な暮らしの中で、全国の高校には『救護団』と呼ばれる生徒で組織する自警団が存在した。校内への不審者の侵入を防いだりするのはもとろんの事、近隣住民の平和と安全を守る団体。俺はその救護団に所属し、特殊部隊として活動しているんだ。
 この『救護団』というのも、ちょっとやそっとじゃ入れないし、その中でも『特殊部隊』なんつったら選ばれた人間のみが入れる部隊。俺はソレに選ばれて、しかもリーダーを任されている。
 なぜ俺が『特殊部隊』に選ばれたか?と言うと、俺は小さい頃から、米軍空手と呼ばれるマーシャルアーツを習っていた。8歳の頃、プロレスの前座で、プロレスラー2人を病院送りにした事もある。その後も、言い寄る変な連中には基本的に負けた事が無い。つまり、『強い』って理由で救護団団員で特殊部隊のリーダーな訳。
 リーダーと言うからには、メンバーがいる。特殊部隊は俺を入れて5人。みんな気の合う仲間だし、この俺さえも「奴等は強ぇ。」と認めている。この5人がそろえば、「手だけ」だろうが「顔だけ」だろうが敵じゃない。

 さっそく俺は、仲間の一人に会いに行った。

 その仲間のひとりは今、黒金高の寮に住んでいる。名前は植村飛鳥(うえむらあすか)。歳は同じ。自称『駄菓子屋マニア』という飛鳥は、ガクランのポケットに常に飴やビー玉などを入れている変な奴。しかし、いざ喧嘩となると、そのビー玉やメンコ、ベーゴマを使いいろんな技を繰り出してきて、しかも強い。俺も一度、半殺しの目にあったりもしている。
 ノリも良いし、こんな面白い事件にはすぐ飛びつくだろう。
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