FILE.02 手だけの怪物
 俺達、特殊部隊の今回の仕事は、真弓が言っていた『手だけの怪物』の事件。とにかく俺達は、その『手だけの怪物』が目撃されたと言う公園に言ってみる事にした。
 昨日、真弓から話を聞いてから学校の連中にも少し聞き込みをした。すると、4人程の生徒が目撃していると言う結果を得る事が出来た。真弓の話はまるっきし嘘では無かったという事になる。・・・かもしれない。・・・まだ、はっきりしない。50%の不信感と50%の期待で俺達5人はこの場所に立っている。『期待』って言うか『希望』。退屈な日常に少しでも張り合いが欲しい。俺達は全員そう思っていた。
「『手だけの怪物』って、どっちの手でしょう?」
 太郎が変な事を言い出す。
「右手じゃなかと。」
 答えは、飛鳥が出した。
「『手だけの怪物』は、『手だけ』やけん。そいつが何かを相手に伝えようとする時は、『筆談』って事になるやん。だけん、鉛筆とか持てる『右手』と言う事になる。」
 「真実はいつもひとつ」の探偵みたいな発言で飛鳥が誇らしげになっている、実際『筆談』でも手だけの怪物には会話をする相手はいるのか?そう考えていた時、
「左利きかも・・・。」
 雅がボソッっとつぶやいた。



 ・・・とにかく散策開始だ。
 現在の時刻は夜7時。秋も中盤に差し掛かっているため夕方6時を過ぎると、この辺りは真っ暗になる。しかし、真っ暗になっても、ここでエッチな事をしようと考える野外プレイ趣味のカップルはいない。なぜなら、この時代、夜の7時から11時までを『3怪の時間』と呼ぶ。
 『3怪の時間』とは、光を嫌う闇の怪物達が活動する時間。
 1997年、新宿にある石崎特殊生物研究所から3体の怪物が逃げ出した。その怪物は、ミーア、サーア、ノーアと言う狂暴で肉を主食とし、人間も平気で襲う恐ろしい怪物で、特殊生物研究所で科学者達が作り出した『新生物』。この新生物は光を嫌い、きっかり夜の7時から11時までの時間だけ活動する、さすが科学者達が作った怪物だ。・・・と言っても、しょせん3匹の怪物って思ってるだろ?しかし、コイツ等は、週に3匹の子供を産む。つまり、現在ではとんでもない数になってるって訳だ。国は、この怪物達を何とかしようとして、去年の暮れに3体の母体(ミーア、サーア、ノーア)を退治する事に成功した。これからは、増えずに減る一方だとは思うが、今でも1万匹を越えるこの怪物の子供達がこの『3怪の時間』に活動して、人間を襲っている。
 こんな怖い時間に外に出る奴なんていないよな。
前に戻る 次に進む