「俺のかあちゃんは、DMANだから、薬を持ってるかも・・・。」
 1990年代半ば、DNAと言う言葉がTVからバンバン流れてくる時代。DNAの研究もどんどん進歩していったらしい。その研究の行き先に『DMANの誕生』があった。その第1期のDMANとして、俺のかあちゃんもDNA手術を受けさせられたという。つまりモルモットとして手術をされて、誕生した初期型のDMANという奴だ。1個だけだけど、かあちゃんが薬を飲む姿は、ガキの頃からずっと見てきて知ってるし、つねに持ち歩いているはず。
「頼む剣!!太郎んために剣のおばちゃんから薬ば、貰って来てくれんやろか?」
 ざくろの家から太郎の家までは、約4km。俺の家はここから約5km。太郎の家の方が近いけど、家に薬があるとは限らない。家族の中で太郎だけがDMANだから・・・。やっぱ1km遠くても、おれん家の方が確実だ。
「分かった。かあちゃんから薬もらってくるよ。」
 俺はそう言うと、家の前に進み出た。俺のDJrとしての特殊能力『瞬足』のお披露目だ。
 俺の能力は『瞬足』。かあちゃんから受け継いだ特別な力。ただ、走るのが凄く速いと言うだけの能力だけど、自分で言うのもなんだが、とにかくみんながビックリするほど速い。軽く走っても100m、約4秒。今回は、太郎の生死にかかわるので、本気で走らなければならない。俺は、クラウチングスタートの格好をとる。
「レディ〜、ゴー!!」
 ざくろがスタートの合図をだし、腕を振り下ろした時には、俺はもう50mくらいの位置にいた。



 ここから5km、単純に考えても4分くらいかるかな。何だかんだあって、往復で10分ってところ。とにかく、いつ死ぬか分からない太郎のために全速力モードは変えられない。俺はアスファルトの大地を一歩当たりコンマ数秒で、踏み込んでいった。
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