途中、幅80cm程の民家と民家の隙間があった。ここを通り抜ければ、結構近道になるだろう。俺の走りの特徴は体に振れが無いと言う事。俺の肩幅50cmの広さがあれば、どんな隙までも、減速する事無く走り抜ける事が出来る。・・・しかし、問題が無い訳ではない。その問題とは、俺は軽度の方向音痴。知らない道も5回くらい通ればなん
となく覚える事は出来るんだけど、初めての道は、全然訳分からない。安全性を考えれば、やっぱり大通りを爆走する事が無難だろう。
 車よりも速いから、走っている車の間を擦り抜ける事も可能だし、遅くても12分くらいで行って帰ってこれる。
 俺が帰ってくるまで死ぬなよ、太郎!!
 何度か道を間違えながらも、ざくろの家を出発して3分、俺は自分家の近くまでやってきた。もう少しで、俺ん家だ。その時、目の前に近付いてくる建物を確認した時、俺の頭の中に一つの考えが浮かんだ。
「行くか・・・?廻るか・・・?」
 その考えとは、モダン通り商店街。この商店街を突っ切るとかなりの時間を稼げる。突っ切らないとすれば、回り道をしなければならなくなって、結構のタイムロス。
 5kmの道のりを、3分そこらで走りぬいた俺の中に、少し余裕があったのかもしれない。俺は商店街を突っ切るという答えを出し、弾丸のように商店街に突入した。



 とんでもない事になると言う事を、その時はこれっぽっちも考えていなかったんだ。










『『走れメロス』のように』 終
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