FILE.04 爆走日和
 ざくろん家で、太郎がたおれた!!
 理由は、DMANの特殊能力を維持する『Dの安定剤』と言う薬が切れちまったからだ。
 俺もDMANだけど、太郎とはちょっと違う。なぜか?と言うと、俺は『DJr』。DMANから産まれた二世(DMAN.Jr)なんだ。産まれた時から特殊な力を持っているので、拒否反応が無い。だから俺には『Dの安定剤』は、必要ないから持ってない。
 ど・・・どうすれば良いんだ?
 俺が『DJr』と言う事は、俺を産んだ親は『DMAN』。つまり、俺のかあちゃんなら薬を持っている。太郎のために俺は、俺ん家までの5kmの道のりを爆走する。
 今日は抜群の『爆走日和』だ。

 俺は5kmの距離を3分そこらで、走り切ろうとしている。これが俺の『DJr』としての能力『瞬足』。そして、もうちょっとで俺ん家に到着する。ここを通り抜ければ、目の前だ!!「ここ」と言うのは、俺ん家の近くにある『モダン通り商店街』。俺はこの商店街を突っ切る事に決めた。これから起こる惨劇の幕開けだと言う事も気付かずに・・・。



 そう!そうなんだ!ざくろの家に俺達が集ったのは放課後。何だかんだやってざくろの家に着く頃には午後4:30をまわっていた。それからすぐに太郎が倒れ、そしてすぐに俺が出発して、現在『モダン通り商店街』突入は、午後4時40分28秒56。俺の体の中のどこかにある原子時計は、そう告げていた。感の良い奴だったら分かるだろ?商店街で、午後4時と言えば、おばちゃんパーマ率が、商店街面積の約90%を超え、夕飯の買い物紛争の激戦区になっている。俺はそのとんでもないエリアに減速もせずに突っ込んだんだ。
 まっすぐ。ただただ、まっすぐに突っ走るのだったら、得意中の得意。しかし、目の前に現れるすんごい数のおばちゃんディフェンダーを一人残らず交わすなんて、苦手中の苦手。踏み止まってバックなんて、もっての外。とにかく、後戻りは出来ない。俺は世界一のサッカー選手みたく成り切ろうと決めた。
 1人・・・2人・・・。
 おばちゃん達にしてみれば、厚くペイントされたその顔の数ミリ手前で直角に方向を変える高校1年生の存在なんて、これっぽっちも意識してないだろうなぁ・・・。
 3人・・・4人・・・。
 いきなり5人目のおばちゃんで、超やばかった。おばちゃんの目線、体の向き、歩くスピードこれらを瞬時に判断してどの位置で避ければベストかを俺の頭脳が弾き出した時、
「あら、奥さん。」
 と、おばちゃんは方向を変えた。最悪だ。ギリッギリでなんとか避ける事は出来た。奴等のほとんどは、ご近所付き合いで親しく、呼び止められて立ち止まると言う行動も有り得る。注意しとかないとな。
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