「なんですとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」



 今、凄い戦いを繰り広げてきたその地のどこかに俺のかあちゃんはいたんだ。もう一度、商店街に戻らなければならない。・・・でも、ちょっと待てよ。俺は冷蔵庫を開けてみた。俺のかあちゃんは、歳のわりにはしっかり者で、冷蔵庫を見て夕食の献立を決め、足りない物だけを買いに行く『理想の主婦』。つまり、冷蔵庫にあるジャガイモ、にんじん、玉ねぎそして、テーブルの上には、カレーの箱が置いてある。かあちゃんの料理のレパートリーの狭さから推理して、今夜は晩飯は、カレーだ!!
 となると、たりない物は『肉』。俺は、モダン通り商店街にある『山下精肉店』へ突進した。

 モダン通り商店街では、俺と激突したおばちゃんが、みんなの注目を浴びながら「ヨッコラショ」っと、立ち上がっている真最中。顔は見られてないと思うけど、俺はおばちゃんの近くを通らずに背を向けて肉屋を目指した。・・・そして、いた!!
 剣 舞子(32歳)。透けたビニールのバックを片手に、茶色のボブヘヤーで、肌は小麦色。まあ、俺のかあちゃんだから間違える事は無いけど、すぐに見つける事が出来た。
「かあちゃん!!た・・・太郎が大変なんだ。」



 午後4:50。ざくろの家に到着した。往復10kmの道のりを何だかんだあって、約15分ほどで行って帰ってきた事になる。
 ざくろの部屋のベッドに寝かされていた太郎の口に、かあちゃんからもらってきた2粒の薬を押し込む。・・・で、5分くらいで太郎の意識は戻り10分後には、いつもと変わらない状態になった。めでたし。めでたし。

 あ・・・余談になるけど、その夜の俺ん家の晩飯は『カレー』ではなく『ナバム・コンガ』とか言う、ジャガイモやにんじんを使ったアフリカあたりの民族料理。かあちゃんの初挑戦料理だってさ。・・・推理、出来るわけねぇよ。
『爆走日和』 終
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