FILE.06 首都高トライアル
「さて、ケーキ大食いバトルもいよいよ大詰め。現在、飛鳥君が6個。ざくろ君が7個と追い抜く可能性が、まだまだある状態。どうですか?解説の太郎さん。どちらが勝利を獲得するでしょう?」
「そ〜ですねぇ。ざくろ君の好物は『ケーキ』と、かなり有利な常態にありますし、飛鳥君も駄菓子で鍛えた甘党にはかなりの自信があるようです。」
「おぉっと。ここで飛鳥君。ざくろ君の7個に並びました。・・・あ、電話だ。」
 剣は、ざくろのポケットから携帯を取り出し、
「はい、もしも〜し。ざくろの携帯で〜す。」
 と、電話に出た。某は追跡中のタクシーの中から電話をかけている。
「なんだ雅か。・・・ん?今?今ね〜。ここの喫茶店の『ケーキ食い放題メニュー』を利用して、ざくろと飛鳥が大食いバトルやってんの。」
 スタジオから追い出された4人は、喫茶店で暇を持て余して、『大食いバトル』なる、訳の分からない遊びの真最中らしい。某は、今しがた起こった『アイドル広末響子拉致事件』の全容を剣に伝えた。
「な・・・なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。響子ちゃんが拉致されただぁぁぁぁぁ。すぐ行く。」
 そう言ったとたん、携帯越しに喫茶店の入口のドアに取り付けられたベルの音がかすかにカランッとなった。たぶん、剣が出動したのだろう。そして、
「ざくろだ。雅、どうした?」
 と、置き去りにされた携帯を拾い上げ、持ち主の声が聞こえた。



 フジテレビのスペシャル番組『緊急特番!!日本の武術』の公開録画が終わり、帰宅の途につく途中、我々の目の前で、この番組に特別ゲストとして呼ばれていたトップアイドルの広末響子さんが、地下駐車場で3人組の男に拉致され、そのまま白のクラウンでフジテレビ駐車場を飛び出した。それを目撃した某は現在、フジテレビ前でタクシーを止め、響子さんを連れ去った車を追跡している最中である。
 車は、東京湾岸道路を千葉方面に進み、荒川を超えた辺りから車は、首都高速中央環状線へと滑り込む。
 某が乗り込んだタクシーの運転手は若い頃、警察官を夢見ていたらしく、かなり熱くなっているように思える。
「お客さん。振り落とされないようにしっかり捕まっていて下さいよ。」
 タクシーの運転手は、おもむろにシートベルトを外し、あらたにナイロン性の4点のシートベルトを締め直した。新型三菱ギャランZ−XLのタクシーは、爆音を奏でながら前方を走るクラウンをピタリとマークする。某は、足回りを固めた乗り心地の悪いタクシーに揺られながら、解決策を考えていた。
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