120kで首都高を走る白のクラウンの運転席側の窓をざくろがノックする。
 運転手は隣りを走るざくろ達に気付くが、「あっちに行け」とでも言うように手を振った。その時、ざくろの後ろに乗っていた飛鳥がいきなり運転手目掛け、ビー玉を発射した。
 飛鳥の放ったビー玉は、運転席側のガラスを勢い良く突き破り、そのまま運転手の額に直撃する。運転中に運転手が気絶させられ主を失った車は操縦不能になり、高速道路上でくるくると廻りはじめた。
 そして、そのすぐ後ろに付けていた某を屋根に乗せているタクシーの運転手は、瞬時に危険を察知し急ブレーキを踏んだ。屋根の上にいる人間がどうにかなる。と言う事は、ブレーキを踏んだ後に気づいたらしい。120kで走っていた車が突然、0km/時に減速すれば、その反動で某は前方に飛び出す事となる。
 先祖代々受け継がれた真剣『岩豪丸』を構えた某は、この出来事によって高速道路上で暴れまわる白い怪物の前に飛び出した。
「きえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい。」



 気合いを入れ、暴れる白い怪物に刃先を向け、真横から切り裂く。鉄と鉄とがぶつかり合い、車のタイヤはキィィィィッと苦痛の悲鳴をあげ、そして止まった。白い怪物の体内にいた3人の犯人と広末響子さんは目を廻しているようだ。

「これからどうする?警察でも呼ぶか?」
 路肩にバイクを止め、近付いてくるざくろ達が某に問い掛けた。
「そうだな。後は警察に任せた方が良かろう。」
 そういう会話を交わしている時、『フジテレビ』と書かれたバスが、我々の前に止まり、中からマイクを持った渡辺徹さんが現れ、そしてカメラを抱えたスタッフの人々が後に続く。
「いやいやいやいや。凄い物が、撮れましたよ。」
 我々の方に近付いてくる渡辺さんは、ニコニコ微笑みながらそう言った。
「驚かしてすみません。実はこれ、スペシャル番組の続きなんですよ。はっはっは〜。」
 渡辺さんが言うには、これはスペシャル番組『緊急特番!!日本の武術』のコーナーのひとつで、武闘家の人達の実際の活躍をカメラに収めるのが目的だったという。・・・つまり、収録はまだ続いていたと言うのだ。
 呆然と立ち尽くすざくろ達。某も例外ではなかった。
 そしてこれで、全ての撮影が終了したと我々に告げられる。さすがに某も今日は非常に疲れてしまった。
 ・・・それにしても、剣はどこまで行ったのだろう?
『首都高トライアル』 終
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