ごみ箱の中、側溝の中、いろんな場所を捜しているが、それらしい犬は見つからず、2時間程の時間が過ぎた。放課後、2人に出会ってから2時間と言うと、結構な時間になっており、辺りも暗くなってきている。
「亜樹ちゃん。もう暗くなったからお家に帰ろう?後は、お兄ちゃん達がミルクを捜しとくからね。」
 僕達は、亜樹ちゃんを家に送って行く事にした。ざくろの頭の上で亜樹ちゃんはまた、シクシクと泣きはじめている。
「バカ犬じゃねえなら、もう家に帰ってんじゃねーか?」
 ざくろなりの慰めの言葉だったけど、保育園児の少女は『バカ犬』だけに反応して亜樹ちゃんは、ざくろのポニーテールを引っ張った。

 目の前に、亜樹ちゃんの家が見えてきた。街燈が点くか点かないか微妙な時間になっている。その時、ざくろの頭の上で力無くぐったりしていた亜樹ちゃんが、いきなり大声で、
「ミルクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
 と、叫んだ。僕達は亜樹ちゃんの目線を確認し、その方向に眼をやった。すると、とんでもない物が目に飛び込んでくる。



 そのとんでもない物とは、『6年型軍用犬ワープドッグ』。
 2000年初頭、長野にある特殊軍用生物開発研究所では、生物兵器の開発が行われていた。最近、仏伊戦争で多大なる功績を上げているイルカの体内にプルトミサイルを埋め込んだ『イルカ魚雷』の特許も、この研究所が取得した物で、その他にも20種類を越える軍用生物兵器が誕生している。しかし、2018年、この研究所は突然の火災に合い閉鎖。20種類の生物兵器は各地に逃げ出した。
 その生物兵器のひとつが、この『軍用犬ワープドック』。ドーベルマンのボディを持ち、首から生えた頭は2つ『ケルベロス』と呼ばれる類の犬。右の頭は、攻撃を司る『ブッチャーヘッド』。左の頭は防御を司る『ディフェンスヘッド』2つの頭を持ったこの犬は、文字どおり『軍用として開発された犬』だった。しかも名前が示すように『ワープドッグ』とは、『瞬間移動ができる犬』。こんなとんでもない物が、目の前に現れること事態、凄い事なのに、こいつが亜樹ちゃんの愛犬『ミルク』だとすれば・・・。
『愛犬ミルクを捜せ!』 終
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