FILE.10 不器用でも良かろうが!
 その日俺達は、学校近くの俺達の溜まり場、『喫茶SATUKI』で、暇していた。あまりの暇さに剣が変な遊びを思い付き、俺達5人は、その遊びをはじめる。その遊びとは、『バンバン女の子に点数を付けて行きましょうゲーム』。喫茶店の窓から見える道路を横切る女の人達に勝手に点数をつけて、ただ盛り上がるそれだけのゲーム。暇な俺達は「何もしないよりまし」と言う理由でゲームをはじめた。
 何人かの女の人を窓越しに俺達は勝手に点数を付け、わいわい盛り上がった。そして、最後にターゲットになった女の人は、俺達と同じ黒金高校に通う1年C組の石橋圭子さん。俺が影ながらお慕いする女子。それを知っててコイツ等は、石橋さんを最後に選んだ。コイツ等は変な点数を容赦無く口走り、俺の怒りは頂点に達する。しかもあろうことか、よりにもよって窓越しの石橋さんは3人組の変な男達にナンパされてたりする。
 俺、植村飛鳥の怒りは頂上よりも高くブチ上がった。
「あんボケ等!!俺の目の前で何ばしよっとかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
 俺は無意識の内に『喫茶SATUKI』から飛び出していた。
「おい!飛鳥!!」
 他の4人も後に続く。
 俺が喫茶店から飛び出した時、10mくらい先にいる石橋さんは、変なアフロ男に肩を抱かれている。俺は、ズボンの後ろのポケットからビーダマを取り出した。そしてビーダマを握った右手をまっすぐ前方に突き出し照準を合わせる。的(まと&てき)は肩を抱いてるアフロの手。数センチずれれば石橋さんの美しい顔に直撃する。そんな事は百も承知だ。しかし、俺には自信がある。何百、何千と実戦、練習を重ねた俺だ。しくじる事はまず無い。
 そもそも『ビーダマ』とは、完全に球体では無い玉。ラムネなどの栓用に使われる完全に球体の玉は『Aダマ』と呼ばれ、液漏れを防ぐために製造される。その選考作業でもれた玉が、この『Bダマ』と呼ばれる玉だ。
 よって打ち込む際、必ず弾道は微妙に曲る。この事を考慮した上で俺はビーダマをアフロの汚ねぇ手にブチ込んだ。
 ビーダマは奴の手の甲ド真ん中に命中し、アフロ野郎は、「ギャッ」と悲鳴をあげて石橋さんから離れた。次に俺の2発目は手の甲を押さえるアフロの肩を撃ち抜く、そして初めてそいつ等は俺の存在に気が付いた。
「だ・・・!!誰だお前等!!」
 アフロとその仲間達は俺の方を睨み付ける。

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