FILE.04 本気で戦う5秒前
 「第189回、日本アカデミー賞!!」
 総合司会の岡田真澄さんのダンディーな声で、『日本アカデミー賞』の収録が始まった。そして今、俺達もその会場にいる。なぜかって?そりゃあ、前回の話を読んでもらうと分かるんだけど、俺達は今回、スーパートップアイドルの広末響子ちゃんのボディーガードを引き受けたんだ。S席とまではいかないけど、2階のスタッフスペースで俺達は待機している。何かが起こるかも知れないって事でね。



 一階の会場は、前方に舞台があって、そして客席。いつもは椅子とかが並んでるらしいけど、今回はその一部を取っ払って、大きいテーブルが20個くらい置いてある。そのテーブルには豪華な花や料理、そして俳優さん達の名札があって、1テーブルを20人くらいの有名俳優さんが囲んで座っている。いつもはテレビでしか お目にかかれない俳優さん達だから、その人達を見れるだけでも来た甲斐があった。森繁久弥さん、木の実ナナさん、上沼恵美子さんといったかなり年配の芸能人の人がいると思えば、観月あさりちゃん、空香ちゃん、深田笑子ちゃんといったアイドルの姿もある。そして、3年前に日本国籍を取って日本でドラマや映画に大活躍中のレオナルド・ディカプリオさんの姿もあって、ものごっつう凄過ぎの会場なのだ。…で、そのテーブルの後ろには階段状に客席が並んでいて、来賓や関係者の人が座っている。今回の収録は一般人のお客は入れないんだって。俺達、ラッキー。ほんでもって、階段状の客席の登り切ったところに大きな扉が2箇所、デンと構えてる。こんな会場で、いよいよ『日本アカデミー賞』が始まったんだ。
 俺的には、あまり映画とか興味なくて、映画を観に行くって事は、年に1回くらいしかない。俺達のメンバーで、映画に詳しいって言えば、やっぱり太郎かな。太郎の話によると、最近の日本映画は、1週間に一本〜二本のペースで新作が撮影されているらしい。じっくり時間をかけて撮影していると、同業者がそのアイデアを横取りして先に同じような映画を撮って発表してしまうって事もあるので、最近では台本とかもないらしく、撮影直前に監督から台詞とか動きとか指示されるって話。そして映画会社もいっぱいあって、月に封切られる日本映画は40本から50本。洋画もあわせれば、物凄い数公開されている。さすがの太郎も、月に6本くらい観るのが限界で、これでも、俺達の間では『よく観る』方にはいる。そんなにいっぱい作品が公開されている中、この日本アカデミー賞にノミネートされると言うのは凄いことだし、それで賞をもらえるって言えば、役者で死ぬまで食って行けるって事になるんだって。響子ちゃんすげー。
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