程なく、我々は3丁目の川原付近へ到着した。
 この川原は、全長1kmに及ぶ細長く伸びた川原で、一角には、少年サッカーチームのサッカー場や、パターゴルフ場などが作られている。この川原のどこかにヤバい状態の太郎がいるはずなのだが…。我々は、川原の土手を走りながら太郎の姿を探しつづけた。
「み・・・雅!! あそこ!!」
 走りながら飛鳥はある方向を指さした。その飛鳥が指をさした場所は、そこだけが景色がゆらゆらと揺らめき、蜃気楼のように景色が歪んでいる。
「急がねば…。」

 蜃気楼の中心にたどり着いた時、そこには上半身裸の剣の姿があった。ここ周辺の気温は60℃を越えている気さえする。
「飛鳥…。お…雅も一緒か。」
 剣は、某の家の方に電話したが、「留守です。」と、言われたらしい。
「太郎は?どけんなった?」
 飛鳥が上着を脱ぎながら、剣に話しかけた。
「あそこ。かなりヤバイ状態。」
 剣が指をさしたその川原には、上半身裸のざくろと、うずくまり頭を抱えた太郎の姿があった。



そして、ざくろは某たちの存在に気が付き、
「飛鳥。軍手持ってきたか?」
 と、飛鳥に声をかけると、飛鳥はポケットから軍手を取り出し、土手を降りていった。そして飛鳥はざくろに一足軍手を渡し、2人で太郎を抱えあげる。太郎は「はぁはぁ」と息遣いも荒く、顔は郵便ポストのように真っ赤になっていた。
「やっぱ、ココじゃまずいだろ…。雅。なんか良い場所しらねぇか?」
 たしかに、この場所は民家が密集し交通量も多い。太郎をどこか安全な場所に移動させないと、大惨事になりかねない。某が出した答えは、歩いて1時間程の山にある採石場だった。急げばもっと早く着くはず。
 某は、真っ赤になっている太郎を背中に背負い、我々は採石場のある山を目指した。
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