その頃、我々『ぼたん班』は採石場に到着していた。太郎の爆破まで残り3分…何とかなる時間。そして某達が車を降りた時、ざくろを背中に背負った剣も到着し、6人で休日の採石場の中に入っていく。
 休日の採石場には人の気配が無く、某はすばやく太郎を採石場の真中へ運び静かに寝かせた。これで太郎が爆発しても被害は最小限に食い止められる。我々は隅のほうへ避難し、遠くで横たわる太郎の姿を見つめていた。
 太郎の『人体爆破』の能力開始まで残り1分を過ぎた頃、またしても事件が起こってしまった。
 山の上の方から、一匹の茶色い野兎が、横たわる太郎の元へ降りてきたのだ。もしこのまま太郎が爆発してしまえば、小さな野兎など、塵となって消し飛んでしまう…。某達が野兎を保護するには時間がなさすぎた…。あの剣でさえ危険すぎる。
 どうする事も出来ず、我々が太郎の爆音を耳を押さえて待っていた時、
「あ…うさざさんだ。」
 と、小さな声が聞こえてきた。某達が目を凝らし太郎を見ると、太郎は目を開き野兎を見ている。すると野兎はペロペロと太郎の頬を舐めはじめ、
「くすぐったいよ〜。やめてくれよぉ〜。」
 と、太郎は笑顔で野兎を抱きかかえた。フと気が付くと、今まで灼熱だった風が穏やかな風にかわっている。太郎の『人体爆破』は、治まったようだ。
 単純と言うか何と言うか、子犬によってキレた太郎は野兎によって怒りを静めた…。動物好きの太郎だからこそ出来る芸当。
 この日の大事件は、ざくろの『次の日、両足筋肉痛』を残しただけで、あっけなく幕を閉じた。








『ざくろの姉上』 終
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