FILE.08 謎の動物園
 剣マシンの三話に及ぶ作品の為に、僕のところに『しわ寄せ』が来た。…ので、早々にストーリーを始めなくちゃいけなくなった。
 その日僕は、暇だったので宛ても無く町を歩いていると、僕を呼ぶ声が聞こえた。
「たろー君!」
 僕は、声のした方向に振り向くと、路上に一台の軽自動車が止まっている。その車は、三菱自動車の『トミカ・ダンガン・ハイパーX』。その車の中にいる女の人が、僕を呼んでいるんだ。その人は、髪の色が金色で、しかもかなり硬そうな髪質。始めて見る人でも、一発で姉弟だとわかる、ざくろのお姉さんの『元内ぼたん』さん。ぼたんさんは、
「たろー君、暇?私とデートしない?」
 と言い、僕を車の中に呼び入れ、どこかへ出発した。
「ぼたんさん。どこに行くんですか?」
 と聞くと、ビシッとスーツを着こなした、キャリアウーマンなぼたんさんは、
「グーラシア。」
 と、答えてくれた。
 『グーラシア』。以前は、『ズーラシア』と呼ばれていた、横浜の緑区にある、珍しい動物がたくさんいる『動物園』。21世紀の始め頃までは、日本を代表する『動物園』のひとつとされていたけど、2010年に内閣総理大臣になった、田中牧夫氏が、動物愛護協会の名誉会長も兼ねていたと言う事もあって、「動物を見せ物にするとは、なにごとだぁぁ。」って、いまさら激怒&国会に提案。翌年に『動物愛護法案』が可決し、日本の3分の2の動物園が、休園または、閉園になった。中でも、この『ズーラシア』は、絶滅危惧種に指定されている動物を公開していたために、国会の一番の標的となり閉園し、それからは、『絶滅危惧種保護研究センター』になってしまい、動物の一般公開はなくなった。そして去年、長年に渡り活動を続けていた田中総理の任期が終わり、「待ってました!」ってな感じで、『ズーラシア』は、『グーラシア』として、今年の4月に再オープンしたんだ。『動物愛護法案』に触れない形で…って話。
 …でも、『ズーラシア』の『ズー』は、『ZOO(動物園)』って言う意味で、それに『ユーラシア大陸』をかけて、『ズーラシア』なのに、『ズーラシア』の『ズー』が、『グー』になったら、何の事か訳分からないと思うけどね。
「たろー君、『グーラシア』行ったことある?」
「ズーラシアの頃は、親に連れて行ってもらいましたが、『グーラシア』になってからは、無いですねぇ。」
「ふーん。私も始めてなんだー。」
 そんな話を車中でしながら、僕達は今回の目的地『グーラシア』に到着した。
 4月にオープンして、まだ1年も経っていないグーラシアは、日曜の昼間だと言うのに以外にも、人影はまばら。『動物園』が人々の目から消えて結構な年月が過ぎてしまったから、こうなってしまったのかもしれない。僕が小さかった頃は、いっぱい人がいたのになぁ。
 ぼたんさんは車を、数台しか見えない広い駐車場に止め、大きな一眼レフのカメラを肩にかけて動物園入り口に向かった。その後ろを僕も付いていく。

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