そしてやっと、意味もなく大きくデンッと構えていたモニターに映像が流れ始めた。
 画面中央から外側に向かって光の帯が、パァァッと流れ、その画像に混じって、卑弥呼、聖徳太子、菅原道真、藤原道長、平清盛、と歴史上の人物が現れる。…でも、北条時政(1203)、空海(806)、豊臣秀吉(1587)ザビエル(1549)、伊藤博文(1885)、ペリー(1853)、縄文式土器(紀元前2000)、徳川家康(1603)と、順番も関連性も何にもない写真とか絵が、バンバン飛んで行く。しかも、3Dレンズを付けているのに、ひとつとして目の前に飛び出した感じには見えない。ほんでもって、『ワープ』と言ったのに、『タイムマシン』的な演出。
 僕達はいったいどこに行ってるのだろう…。
 ガゴン。プシュュュュュュュ。
 揺れがおさまって、映像も終了した。
「遂に我々は安住の地、『カナダ』へ到着した…。これからは、ここ『カナダ』で、平和で幸せな日々を送ろう…。」
 静かな声と、『インド音楽』のような曲がスピーカーから流れ、部屋がパッと明るくなった。…たぶん、これで終了したみたいだ。
 この会場にいた14人は、すごく歳をとったような感じに思え、みんな「はぁぁ。」っと、大きなため息を付いている。
「それでは皆様、モニターの前にお越し下さい。」
 スピーカーから聞こえてくる普通のアナウンスで、僕達はふらふらとすり鉢状のドームを降りていき、モニターの前に集まった。
「これから、皆様は愛らしい動物達とご対面するわけですが、その前に『グーラシア』からの注意事項です。まずは………。」
 そうだ。ここは『グーラシア』と言う動物園。『お化け屋敷』でもなければ、『宇宙アドベンチャー』でも『タイムマシン』の中でもない。何とかして現実に戻ろうとしているのは、僕だけじゃないようで、僕達みんな『グーラシア』の注意事項なんて聞いていなかった。
「それでは動物さん達と、ご対面です。」
 アナウンスが終わると、大きなモニターの真中が左右にゆっくり開き始め、外の光が指し込んできた。今まで室内にいたから、目が慣れるまで時間がかかる。ようやく目が慣れてきて外の景色を見る事が出来るようになると、そこには大量の猛獣や小動物が放し飼いにされ、僕達をじ〜っと見ていた。今にも襲いかかろうとする勢い。
 ここで始めて、ヘルメットとレーザー銃のような物の必要性に気付き、そして、園長が警察に呼ばれた謎が分かったような気がした。



 自然の環境で動物を見る(触れる…?襲われる)事が出来き、そこに到達するまでに数々の不可思議な事を体験できる新感覚の動物園『グーラシア』。ん〜おそるべし!!
以上。
『謎の動物園』 終
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