俺が本屋から帰る時、なぜだか当たり前のように傘の中に剣はいた。
「お前が来なかったら、俺が傘ば貸しとったつに。」
 と剣に言うと、
「無理無理。お前の場合、ドキドキに潰されそうになって「あっち行ってくれー。」とか、思ってたんじゃないの?」
 剣はニヤつきながらそう言った。図星だけに余計に腹が立つ。それから、喧嘩越し口調の俺の言葉を、剣はさらりと返しながら、いつのまにか剣の誘導で、ざくろの家に到着した。

 ざくろの家には、暇を持て余していた太郎と雅の姿もあった。
「くそぉぉぉ。俺もその現場にいたかったぜ〜。」
 ざくろが大声でそう叫び、ざくろのベットに寝っ転がっている俺の顔を覗きこむ。
「なんや!!」
 俺が眉をひそめ凄むと、ざくろはすぐにあっちを向いた。
「…でも、飛鳥的にはこのままで良いと思ってるの?」
 太郎が俺に問い掛ける。俺自身、このままで良いとは思わない。…でも、なにも出来
ないから仕様が無い。
「そこで!頭の良い俺様は、またまた凄いことを考えました。」
 剣は、この部屋に集まっている、俺とざくろ、そして、太郎と雅の前でまた変な提案を発表する。
「題して『飛鳥は石橋のTEL番を聞き出す事が出来るか!ゲーム』。…期間は一週間。お手持ちの1000円札を『出来る』『出来ない』のどちらかにベットして頂いて、その結果を暖かく見守る。そして、負けた人は、勝った人に掛け金を支払うってな感じのシステム。」
 前回の『バンバン女の子に点数を付けて行きましょうゲーム』に続き、またしても変なゲームを考え出した剣。
 俺を除いた全員が賛成し、ゲームは始まった。ざくろと雅は、俺が石橋さんの電話番号を『聞き出せる』と言う方に賭け、剣と太郎は『聞き出せない』と言う方に賭け、なんか凄く盛り上がっている。俺は当事者だから参加できないらしく、賭ける事は出来ない。…でも、なんかこの異常な盛り上がりに、凄く嫌な予感がするのは、俺だけだろうか?




『雨の日の出来事』 終
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