壁の紛煙が治まると、そこにもう一つの大きな影が立っている。剣は物凄い殺気に気付き、すぐさま後ろを振り向いた。そこには岩豪丸を再度振り上げた雅の姿があった。ブォンと振り下ろす鉄刃刀を剣の瞬足で避ける。空振った鉄刃刀はアスファルトの地面を真ッ二つに切り裂いた。
 その光景をニヤッと眺めるざくろの白い包帯が巻かれた胴体に、どこからとも無く手が伸び、傷口をギリギリと締め上げる。苦痛に歪んだざくろの顔が、その手の持ち主を探す。すると、3m程離れた位置に太郎の姿があった。
 それからは、ざくろ、剣、雅、太郎の大乱闘。ドタバタ、ドタバタが続く。俺はゆっくりとその場に近づき、石橋さんの横に立った。
「あ…植村君。」
 と、石橋さんは俺に気付いて声をかけてくれたみたいだったけど、そんな声なんて今の俺には聞こえていなかった。
「ごめんね。石橋さん…。」
 静かにそうつぶやいた俺は、次に大きく深呼吸をし、
「やめろやん!!こんボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」




 夕方、俺達5人は、いつも溜まり場としている『喫茶SATUKI』にいた。
 ざくろ、剣、雅、太郎はワーワー騒ぎながら、
「いきなり怪我してる所掴むなよなー。」
「あれはやり過ぎだべ〜。」
「なぜ、某は『ベンジャミン』になったのだ?」
「…でも、岩豪丸出しちゃダメですよ。」
 と、盛り上がっている。俺はと言うと、冷めた目でそいつ等を見ていた。
 『何でもない事で、これほどまでに盛り上がる奴等。』はたから見ると、やっぱ俺も同じ様に見えるんだろうな〜。…でもまぁ、自分たちが楽しければそれで良いと思う。
これからも多分俺達、バカやっていくと思うけど、みんな、付き合ってくれるかい?
PS.結局、あのまま帰ったから、石橋さんの電話番号聞けなかったよ。(T_T)
『何でもない事で盛り上がる奴等』 終
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