FILE.05 本気で戦う5秒後
 五秒後
 我等が広末響子ちゃんを脅迫したのは、深田笑子ちゃんや空香ちゃんを支援するFANクラブのヲタク達だった。大好きなアイドルを一番にさせるためには手段を選ばないヤツ等。コイツ等が、俺達5人のケビンコスナーの敵。相手にとって不足は…ある。だって、ヲタクだよヲタク。いや〜ん。
 一触即発の中、俺達は弁当をきれいに平らげ、ざくろが口をもごもごさせながら、
「ほんじゃあ、行きますか。」
 と、言い立ち上がった。ふと、俺は舞台の上にいる響子ちゃんに目をやると、響子ちゃんもこっちを見ている。目をウルウルさせながら…。またせてゴメンネ。
「じゅあ雅と飛鳥は、広末をガードしろ。俺は『EZライダー』を潰す。太郎は『笑顔が…』ぷっ。」
 そう言いかけると、ざくろは吹き出した。さすがに『笑顔が好き』の部隊名は、キツすぎる。
「…で、俺は?」
 俺がざくろに、そう聞くと、
「剣は、俺と太郎の援護だ。」
 と、答えた。いくら俺が瞬足とは言え、50mの距離を行ったり来たりかよ。納得いかない俺を尻目にざくろは、
「グッドラック。モンスターボーイ。」
 と言い、俺達は行動を開始した。
 中二階の柵を飛び越え、7m下の会場へ雅と飛鳥が飛び降りる。そして2人は、舞台の響子ちゃんの所へたどり着いた。
「みんな、今のうちに舞台の後ろに逃げんね!!」
 飛鳥が舞台にいる女優さん達に叫ぶ、岡田真澄さんの誘導で舞台上にいる人達は、舞台の裏へ逃げていった。
「響子殿も早く!!」
 雅が響子ちゃんに話し掛けるが、響子ちゃんは雅のガクランの裾をにぎって震えていた。
「仕方無かね。雅!!しっかりガードしとけよ。」
 飛鳥と雅は響子ちゃんを囲むように位置についた。
 太郎は中二階の通路を2枚目の扉の上の方へ走っていた。そのころ下の入り口では、舞台の上にガクランの男が現れた事で、ヲタク達は動揺しているようだ。中二階を進みきって、扉の真上にまで来た太郎は、くるりと柵に背を向け、背中を柵につけたかと思うと、そのまま後ろ向きに一階へ落ちていった。そして太郎の自慢の腕は、一階入り口にいるリーダー格の男の両肩を鷲掴みにする。空中でくるりと回転した太郎は、自慢の腕を縮め、そのまま男の顔面に膝蹴りをお見舞いした。

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