「何ばしよっとか!!ざくろぉぉぉぉ!!」
 俺は、学ランのポケットに常に忍ばせているビーダマを数個握り、拳を作り、その拳の照準をざくろに合わせていた。いくら今は『敵チーム』と言っても、いつも一緒に遊んでいる『仲間』なんだから、そこまでやる事は無いだろう…。ざくろが太郎に行った行為は、完全に俺の理性もフッ飛ばし、ざくろの顔面に、ビーダマ入りの拳を打ち込もうとしたが、ざくろは俺に目も繰れず、宙を舞う太郎を凝視している。
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」
 宙を舞う太郎は、血だらけの口を大きく開け大声で叫び、空中で大きく一回転をすると、太郎の顔は口が大きく裂けたワニの姿顔に変化した。そして地面に四ん這いに着地し、そのままガサガサと移動すると、ワニの大口はざくろの脇腹にガブリと噛みついた。
「ぐわぁぁ!!痛えぇぇぇぇぇ!!」
 ざくろは、地面をごろごろ転がり太郎を振り解こうとするが、上あご、下あごにびっしり生えたワニの歯は、ざくろの脇腹にグイグイ悔い込み、そして、脇腹からは、ドクドク赤い血が流れ始める。あまりの物凄い展開に、俺が呆然としていると、
「雅ぃぃ!!飛鳥を連れて行けぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 と、ざくろが大声で叫んだ。すると突然背後に雅が現れ、俺の両脇を掴むと体はフワリと持ち上がり、肩に担ぎ上げられ、そのまま学校を後にした。…させられた。



 …現在、俺はざくろの家のざくろの部屋でロープでぐるぐる巻きにされ、ベッドに寝かされている。外はもう真っ暗で、夕方の6時頃になっているらしい。
 なんとか太郎のワニ口から逃げ出したざくろと、俺をここまで運んできた雅の姿が目の前に合った。ざくろの脇腹には白い包帯が大量に巻かれていて、しかも大量に巻かれているにもかかわらず、赤い血が滲んでいる。その辺がさっきの壮絶さを物語っていた。
「飛鳥を返せ〜。」
 家の外では、剣が大声で叫んでいる。多分、太郎も凄く重症なんだろうけど、ときたま太郎の「飛鳥を返せ〜。」って声も聞こえてくる。つまり、太郎もその場にいるという事。…コイツ等って一体…。
「さて…。俺達の『切り札』が手に入った…。これからは、俺達の為に動いてもらいますぜ〜。」
 ざくろが、不適な笑みを浮かべながら俺の顔をジッと見ている。何かヤバイ。こいつ等なんかヤバイぞ。

 次の日、ざくろに言われた通り、下校中の石橋さんの後を気づかれないように追けている。普段の俺だったらこんな事ヤル訳が無い。たとえ誰かに土下座されて頼み込まれたとしてもやらない。…でも今回は違う。とにかく違う!。その理由とは、
「俺達が下校中の石橋を襲う。その場に偶然出くわした感じで、お前が石橋を助ける。これが今回の作戦だ。」
 と、ざくろは言っていたが、この短い言葉の裏に物凄い事が隠されていることに、俺はすぐ気付いた。その物凄い事とは、この俺が偶然を装って石橋さんの前に現れないと、石橋さんがどーなるか分かったもんじゃない。それと、石橋さんを助けるという事は、俺はざくろ達と戦わなくてはならず、ざくろvs太郎で、あれほどまで壮絶な戦いを見の当りにすれば、必然的に答えは出てくる…。
『コイツ等は、本気で攻撃を仕掛けてくる。』
 以上の事を踏まえた上で、俺は石橋さんの後を追けていた。
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