第三回 某は、父を越えたかった…。
 牙京雅。小学2年の春……。
『牙京鉄刃流』12代目の総師範となるべく早朝、いつものように父・源一郎と真剣による修行を行っていた。しかしこの日、いつもの雅と違う事を源一郎は感じている。いつもの雅の動きではない…。
「真眼を開け!眼で見ゆる物全てが、真だと思うな。」
 邪神のような輝きでにらみつける雅の瞳は、この日、虚ろさを持ち、鈍く光っている。剣のひとつひとつに重みを感じない。
 剛を煮やした源一郎は、腰に挿した短刀を抜き、雅に投げた。いつもの彼ならば簡単に交わせる攻撃………。
 だが、その短刀は、真っ赤な血に包まれ、雅の右眼に聳え立った。








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